亡国のイージス



福井晴敏原作、とても政治色の濃い映画

亡国のイージス [DVD]

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原作の福井晴敏はこの他にも
終戦のローレライ」や「戦国自衛隊1549」など
戦争と関連した小説を発表している。
もちろん、戦争にも核兵器にも反対だけれども
目の離せない作家であると思う。


この映画のテーマはいくつかあると思う。
まず、現代社会に対する問題定義。
その一つは自衛隊と国防についてであり、
もう一つは閉塞的な社会体制に向けられている。


映画にも、“大国”とか“むこうからは”という呼ばれ方で登場する
ある国が中東で戦争を起こしたこと
そこに自衛隊を派遣したこと
拉致の問題など
昨今、噴出するさまざまな問題に直面する中で
日本はとるべき立ち位置を明確に定められないでいる。
より現実的な対策や検討を望む側と
本当に必要かどうかもわからない不安ばかりを煽り
批判ばかりに気を取られる側がいる。


もう一つは物語の終盤、
多くの幹部や工作員ホ・ヨンハの部下が死んでいく中で
真田広之演じる主役の“仙石恒史”が口にする言葉がある。
「こちら先任伍長、ひとひとまるふた。杉浦砲雷長が今死んだ。
これで何人が死んだ。終わりだ。理屈はもういい。
間違ってる、目を覚ませ」


痛烈だと思う。国防の問題だけでなく。
見えや理屈にとらわれて変わることのできない日本の社会の
すべてに向けられたメッセージのようだ。
現場の人間こそがその場のすべてを知っている。
そして、もしかしたら責任感も最も強いのかもしれない。


最後の方で、作戦が失敗に終わったあとホ・ヨンハの部下たちは自決していく。
今の感覚では恐ろしい国家だと感じてしまうこと。
それでも江戸時代には「切腹」という名で日本人もそれを繰り返していた。


それは美学のように讃えられるが
やはり生きなければならないと思う。たとえ醜くとも。
生きて引き受けなければならないと思う。