雨あがる



雨あがる [DVD]

雨あがる [DVD]



黒澤明監督が映画化実現を
望みながらその最期に合わなかった作品。


うだつの上がらない流浪人が
大雨で足止めを食らった土地での
その土地の殿様との
出会いが描かれている。


とてもとても地味な映画なのだろうけれども
巨匠と呼ばれるような人たちの
作品の中には、確固たる美意識があるように
感じられる。


5年ほど前にヨーロッパを巡りながら
大学で習った時には、つまらなく見えた
巨匠と呼ばれる人たちの建築の写真が
実際にその場に立ってみると
その場に作り上げられた場所として力に
感動したことを思い出す。


三浦展さんが『吉祥寺スタイル』の中で
“スペース”と“プレイス”の違いについて書かれている。
“スペース”=空間
“プレイス”=居場所
と大学では“スペース”=空間をいかに形作るかを教えられた。
けれども、実際に足を踏み入れた建築が
形作っていたのは“プレイス”=居場所ではなかったかと
いま、あらためて思う。


巨匠と呼ばれる人たちの残したものには
はかりしれないものが含まれているのだろう。
逆に言えば、すぐに古びるものなど
とるに足らないものなのかもしれない。


映画の内容に話を戻すと
登場する殿様はなんとも気持ちが良い。
不器用で、生き下手な感じを受けるところが
また何ともいえない。