滴り落ちる時計たちの波紋
- 作者: 平野啓一郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/06/08
- メディア: 文庫
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9篇の小説、9種の企み、9つの輝き、
文学の可能性のすべてがここに。
とうたわれる。
読み始めるとまず、とまどった。言い知れない違和感がある。
今まで読んだどの小説とも違い、平野啓一郎のこれまでの著作とも違う。
何ともいえない。話の中に入り込むことができない。
拒絶されているような、一方で放っておいてもすっきりしない。
生活の一場面が、普段見過ごされるような、
それとも、あえて誰も口にしないような、そんな出来事から
描き出されていく。
作家が描いた世界は、私たちが目の届かぬ所に置いておいて
そっとしておきたいけれども、それが適わないもの。
私たちが抱える何ともいえない不安の1つのカタチのような
そんなものなのだろうか。
一方で本質を見極め、オプティミスティックな世界を描こうとするものがあり、
一方で現状を見極め、ネガティブな私のものを描き出そうとするものがあり、
そのどちらのものも世に問われている。