昭和天皇の時代
- 出版社/メーカー: クロックワークス
- 発売日: 2007/03/23
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第2次世界大戦での日本の敗戦から67年。
私たちの知らないこの戦争は、様々な切り口から、様々な媒体を通して
描かれてきている。私はそのほとんどがどのようなものであるか知らない。
「パールハーバー」のようにハリウッドで作られたものもあれば
この太陽のように、もっとひっそりと作られたものもあるだろう。
終戦の間近い東京において、家族からも引き離され
一人、口うるさい侍従につきまとわれながら、日々の予定を遂行する天皇。
戦争という現実に対して、あまりにも非現実的な状況におかれている
ような印象。
神であらざるものが現人神として奉られ、持ち上げられる。
私たちには知り得ない苦労がそこにはある。
この映画は、果たして戦争を描こうとしているのではなく
昭和天皇その人のある一面を描こうとつとめている。
今年「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」と
クリント・イーストウッド監督による2つの戦争が映画化された。
私はまだ「父親たちの星条旗」しか見ていないが
これまで試みられた描き方からこぼれ落ちている様々な人の人生と
その人たちの時間を丹念に描こうとした。そういうものなのではないか。
過去には勝者の歴史のみが語られ
敗れ去った者たちの時間や歴史など顧みられることがなかった。
それがこうして、今というときは顧みることができる時代になった。
それは一つ大きな技術的、思想的転換ではないだろうか。
勝つ者、敗れる者の区別などないほうが良いことなど言うまでもないけれど。
「太陽」の映像は彩度、動き、場面のつながりが極力押さえられたている。
戦争の悲惨さそのものよりも、それが引き起こす孤独
なにかを疑うことによって、辛うじて生きようとする人間の心の不条理
そんなものが淡々と描かれている気がした。