アルケミスト

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

アルケミスト[alchemist]というのは錬金術師である。
パウロ・コエーリョという名前にも
アルケミストというタイトルにも
錬金術師という響きにも
何か心引かれるものがあった。


平野啓一郎芥川賞を受賞した彼の初めての作品「日蝕」の中で
中世フランスにおける錬金術師を登場させている。
それは異業のもののようであり
科学を志すもののようでもあり
修道者のようでもある。


いずれにせよ、この世に生きていながら
この世に生きていないかのような存在を感じる。


羊飼いの少年サンチャゴはいくつかの出会いを経て
アフリカのピラミッドを目指す。
30年も生きていると登場人物の境遇がそんなに珍しく
感じられなくなってくる。
そんな事もあるだろうさ、そんな気がしてくる。


少年の出会いは物語であり、冒険的だけれども
それは私たちの出会いの暗喩であるように感じられる。
あるものはそこにあって、気づいていないのはどうしてだろう。