アルケミスト

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

アルケミスト[alchemist]というのは錬金術師である。
パウロ・コエーリョという名前にも
アルケミストというタイトルにも
錬金術師という響きにも
何か心引かれるものがあった。


平野啓一郎芥川賞を受賞した彼の初めての作品「日蝕」の中で
中世フランスにおける錬金術師を登場させている。
それは異業のもののようであり
科学を志すもののようでもあり
修道者のようでもある。


いずれにせよ、この世に生きていながら
この世に生きていないかのような存在を感じる。


羊飼いの少年サンチャゴはいくつかの出会いを経て
アフリカのピラミッドを目指す。
30年も生きていると登場人物の境遇がそんなに珍しく
感じられなくなってくる。
そんな事もあるだろうさ、そんな気がしてくる。


少年の出会いは物語であり、冒険的だけれども
それは私たちの出会いの暗喩であるように感じられる。
あるものはそこにあって、気づいていないのはどうしてだろう。


Growth or Development

みなさま、日々何かしたいと胸を抱えています。
小布施ッションの妹尾堅一郎さんは、これからの日本は「成長(growth)」すべきか「発展(development)」すべきか、とその冒頭で私たちに問いかけてくれました。


もちろん、よくわからない常識(common sense)にとらわれ、閉塞感にあふれる日本の国全体としては「発展(development)」すべき局面を迎えていることに疑いの余地はありません。高度経済成長を果たした日本国は、“モノ”を、技術を、洗練させてきました。けれども、一瞬のうちに“モノ・ゴト”を発展させた欧米諸国によって一転、不況不況と呼ばれる時代に転落したのでした。
一方で私たち自身は、それぞれがどのような局面を迎えているのでしょう。日本はイノベーション、発展すべき局面を迎えていたとしても?自分は?どうなのだろうと自問、自省する時々です。ひとまず、今できることの積み重ねが重要なことは間違いない。積み重ねられる一枚の中にイノベーションの一枚が含まれているのかもしれません。


ひとまず!写真を世に問うことをはじめたいと思います。
kemplebarのアルバム
http://d.hatena.ne.jp/kemphoto/

ひとまず!ブログを一つ増やしました。


さて、妹尾さんの「成長」「発展」に戻って考えてみたいことがあります。ぼくはこの質問を受けたとき、パッと「成長」だと思ったのです。それはなぜでしょうか?もちろん、この2つの言葉の定義があいまいだったこともありますが、経済と文明の発展がもたらした正しいとは決して言えないさまざまな出来事が頭に浮かびました。科学、技術、学問は、既存の枠組みにとらわれずおおいに発展すべきでしょうが、果たして私たち人間は精神的、内的な枠組みまでも取り換えてしまっているのではないか。
成長すべきか?発展すべきか?その判断の視点をどこに定め、どう解釈するのか。これも大きな問題のようです。


小布施ッション76

今日の小布施ッションは妹尾堅一郎さんをお迎えしました。
ご自分の客員教授などを数えると合計8つ。
毎週どこかの大学で講義をしています。
しかも、全て違う科目を受け持ち、違う講義をされている。
これには驚きました。


お話はコンセプトワークを中心として
各時代ごとのはやりすたりから、それぞれの時代のコンセプトを見定め
では次の時代のコンセプトは?これだ!と
小布施ッションのセッション参加者は
私も含め、相当興奮していたはずです!


ものごとをここまで、理論立てて解説するその分析力には
ただただ頷くばかりです。
やはり、理屈が通るってすばらしい


超・美術館革命

超・美術館革命―金沢21世紀美術館の挑戦 (角川oneテーマ21)

超・美術館革命―金沢21世紀美術館の挑戦 (角川oneテーマ21)



金沢21世紀美術館の館長を勤められた蓑豊さん。
名前が2文字というのもなんだか親近感を感じる。


妹島和世さんが金沢のコンペに勝って、設計が建築雑誌などに
取り上げられたのはまだ学生のときだった気がする。
オープンは2004年10月とあったから、まだできてから3年。
実家から近いこの美術館には、それでも3回ほどおとずれている。
そんな自分も、楽しい美術館という蓑さんのマジックに
捕まってしまったのかもしれない。


確かに、建物だけを見れば歴史的な街、金沢にあるということで
意味があるとも言えるし、テクスチャーのない薄っぺらいもの
という言い方もできる。
この人の「美術館は市民の応接間」という言い方は
とてもシンプルですばらしい。
たくさんの人を呼んで、いろんな人に楽しんでもらうには
そういうのが必要だと思し、自分の街に誇りを持たせるように
働き掛けていることがすばらしい。


もう一つ、美術館の中に張り紙が何もないというのもステキだ。
まずは、建築の価値を十分に理解していなければできない。
利用者の不便さを違う価値観で超えていく覚悟も必要だ。
最近は公園の砂場にも網が掛けられたり、犬の散歩は禁止、ボール遊びも禁止。
おまけに、道端の落ち葉とともに苦情がたまり
胡桃や栗が落ちてくれば怒鳴り込んでくるような人がいる。


本当はバカじゃないのと言いたい所を
具体的に楽しんでもらいながら、実行している所はすごい。


秋山郷

先週末は秋山郷を訪れた。母と2人紅葉の山道を志賀高原から新潟県へと抜ける。
抜けた先はトリエンナーレの舞台となる妻有地方。


一日目はあいにくの雨、雨と霧にかすむ山道を行くと
昔はどんな風だったのだろうかと、ふと不便さを思う。
ガードレールもない、ギリギリすれ違えるかという山道には
黄色く色づいた広葉樹の中に時折、紅がさす。


平家の落人伝説は長野県の至る所にある。
秋山郷もその一つ。温泉もあり、秘境と呼ばれるにふさわしい
山が近いこの場所は森が近い。
普段の生活ではどれだけ山や森から離れてしまっているのだろうかと
身体の中の何かが鈍ってしまっているような気がする。
あいにくの雨のなか、水に濡れて艶を増した木々が
いとおしく感じられた。


名所が点で示される観光地に対して、(最近は線で強引に結ぼうとしているよう)
ここでは場所そのものを目当てに人が訪れる。
紅葉を見て楽しむってどういうことなんだろうか。


秋山郷のアルバム


東京マラソン2008

10月に入ってすぐの週末、家に帰ってメールをチェックすると
待っていました。東京マラソンの当選通知がきてました。
そう応募者15万人、マラソンだけに限ると12万5,000人の応募が
あったようです。


本日、無事に参加費を支払いを完了。
あとは、当日に向けてトレーニングを開始するだけです。
ヒザが痛くなったりとか、寒さとか
色々な心配事は尽きませんが、今年一年やるときめた
ラソンの集大成になりそうな予感です。


小林美弥子 小布施ッション75

今回の小布施ッションのゲストは小林美弥子さん。
パッチワーク・キルトの日本における第一人者。
キルトやパッチワークに対しては小林さんもお話の中で
冗談めかして繰り返したような先入観を持っていました。


「裁縫好きのおばさんたちがやるような趣味」
というような認識。自分の祖母もそんなようなものを
つくっていた。ときには毛糸の編み物であったり
籐の編み物であったりした。


しかしそこには長くて深い歴史が隠れていたのです。
お話の中での一つの柱として、アメリカでのキルトの歴史
に関わるいろいろなことをお聞きしました。


今のように女性の人権や人間の自由が許されない
社会や時代の状況の中で、キルトの絵柄に様々な
主張を盛り込んでいる例もあるそうです。
その代表例が“スー”という女の子を柄の中に登場させ
いろいろなことにチャレンジさせることがありました。
現代のぼくたちがブログをさらっと書くような感覚で
当時の主婦たちはキルトを縫い合わせたのかもしれません。


また、キルトの作り方としては、みんなでキルトをまわして
12人がそれぞれ作った12ピースをあわせたキルトをつくったり、
同じ布地を一度しか使わないでキルトをつくったり、
お客様が来るとき専用のキルトを編んだり、
そうした様々な編み方を楽しんだみたいです。


ほとんど家庭の中にしか登場しないものだから
洗練された雰囲気を感じなかったけれど。
小さな布地をあわせた中に広がる大きな世界を
感じような話でした。


キルトはご婦人たちの趣味やボランティア的な
つながりでこれまで進化してきたのでしょう。
これは、経済活動の中に飲み込まれてきた
ほかの様々なものの変遷とは大きく違うものだと思う。
この一点がもしかしたら、なんとなく洗練されてない
と自分が感じてきたことかもしれません。


だとすれば、経済の中に飲み込まれ
作ったり、交わったりする楽しみだけでなく
見せることに特徴的な現代のあふれる物たちと較べて
とてもとても、興味深いもののあり方ではないかと思う。


小布施ッション75 小林美弥子